月経不順 ヤーズ

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新しい(第四世代)経口避妊薬 ヤーズの利点と欠点

 

月経困難症に対して保険適用となった経口避妊薬にルナベルとヤーズがあります。

 

ルナベルにはホルモン量が非常に少ないものとしてルナベルULDというタイプも発売されました。

 

これらはどう違うのでしょうか?

 

 

ルナベルについてはほかのところで書きました。

 

⇒ ルナベルと月経過多

 

ここでは主にヤーズについて記載します(ルナベルと比較しながら)。

 

 

 

ヤーズは低用量ピルでは最も新しい第4世代と呼ばれるもので、日本では2011年の終わりごろに発売開始されました。

 

これに含まれているホルモンはドロスピレノン(プロゲステロン機能)とエチニルエストラジオール(エストロゲン機能)です。

 

新しいホルモン成分はドロスピレノンの方で、これは合成ホルモン剤なのですが、これまでのどの合成プロゲステロン製剤よりも実際の体の中にあるプロゲステロンに近い構造であるというのが売りです。

 

(エチニルエストラジオールに関してはほかの低用量ピルと同じ成分です。)

 

 

 

これまで、経口避妊薬の内服には困った副作用が付きまとっていました。

 

それは気分不快、吐き気、嘔吐、眠気、頭痛、倦怠感などの妊娠初期の悪阻のような症状です。

 

低用量ピルにしても中用量ピルにしても、どちらもそのような副作用があって、日常生活に支障が出るほどそれが強い人は服用をあきらめざるを得ませんでした。

 

 

幸いなことに、ヤーズではそれらの副作用の発現頻度がものすごく低くなるのです。

 

ヤーズ服用者の80〜90%はそれらの不快な症状から解放され、それまで飲んでいた経口避妊薬に比べれば素晴らしい薬であると喜ぶ人が多いのです。

 

特に働いている若い女性からは支持を集め始めています。

 

これはおそらく、新しく開発されたドロスピレノンが、より生体のプロゲステロンに近い効果を発揮するからであろうと考えられています。

 

 

 

しかし同時に、ヤーズには困った問題が指摘され始めています。

 

もともと、経口避妊薬の深刻な副作用の一つとして「血栓症」が起こりやすいことが言われていました。

 

頻度は少ないのですが、発症すると命に係わることもあるために重大な問題となる副作用です。

 

 

これは起こしやすい遺伝素因がある人が内服したことで発症すると考えられています。

 

参考記事⇒ ピルと血栓症

 

 

いくつかの報告によれば、ヤーズではほかの低用量ピルに比べて発症頻度が明らかに高いというのですね。

 

いくつかのレポートをまとめて考察した論文が、2013年春にBritish Journal of Obstetrics & Gynecologyに載っていましたので紹介します。

 

BJOG. 2013 Jun;120(7):801-10. doi: 10.1111/1471-0528.12210. Epub 2013 Mar 26.
Drospirenone-containing oral contraceptive pills and the risk of venous and arterial thrombosis: a systematic review.
Wu CQ, Grandi SM, Filion KB, Abenhaim HA, Joseph L, Eisenberg MJ.
Faculty of Medicine, McGill University, Montreal, QC, Canada.

 

⇒ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23530659

 

結論だけ抜き出せばこうです。

 

The rate ratio for VTE among drospirenone-containing OCP users ranged from 4.0 to 6.3 compared with non-users of OCPs, and from 1.0 to 3.3 compared with levonorgestrel-containing OCP users. The arterial effects of drospirenone-containing OCPs were inconclusive.
AUTHOR'S CONCLUSIONS:
Our systematic review suggests that drospirenone-containing OCP use is associated with a higher risk for VTE than both no OCP use and levonorgestrel-containing OCP use.

 

ドロスピレノンの入っているピル(国内ではヤーズ)の内服により、ピルを飲んでない人に比べれば4.0倍から6.3倍、静脈血栓症の発症頻度が上がる。

 

ルナベルなどのピルに比べても1.0倍から3.3倍、静脈血栓症の発症頻度が上がる。

 

ヤーズ服用者における致死的な深部血栓症の発症頻度はほかの低用量ピルに比べると2〜3倍高いと考えてよさそうです。

 

 

実際、日本でも発売開始以来、推定14万人の利用者の中、87件の血栓症発症が報告されています。

 

このうち、死亡例が2例あります。

 

吐き気などの副作用の少ないプロゲステロン製剤である、生体に近い構造のドロスピレノン使っているヤーズ、しかもエストロゲン製剤の使用料は非常に低いのに、どうしてこんなことが起こるのでしょうか?

 

 

これは私の推測ですが、生体に近い構造であることが、逆に重篤な副作用である血栓症を引き起こし易くしているのではないかということが考えられます。

 

 

なぜならば、もともと、血栓症というのは妊娠中の深刻な合併症の一つとして知られているからです。

 

その発症頻度は経口避妊薬服用者(中用量ピルの内服者のデータ)のおよそ4倍になります。

 

 

具体的に説明すると、もしも血栓症を起こしやすいある遺伝素因を持つ人の場合、ピル内服で10%の人が血栓症を発症するとすると、その人が妊娠した場合には40%の頻度で血栓症を発症しやすくなると考えられているのです。

 

ここから逆に考えると、ヤーズに入っているホルモンの作用が妊娠のときのホルモンバランスの作用により近いとすれば、ほかのピルに比べると血栓症の頻度が高くなってもおかしくないな、そう考えることもできるわけです。

 

 

もちろん、妊娠中のホルモン量と低用量ピル内服中のホルモン量は全く異なります。

 

妊娠中のホルモン曝露量の方が圧倒的に多いので、妊娠中の方が血栓症が起こりやすいと考えるのが自然だとは思います。

 

 

でも、ヤーズで確認されている血栓症の起こりやすさ、そしてほかの低用量ピルとヤーズとの違いは含まれているプロゲステロン製剤にしかないことを考え合わせると、

 

生体に近いプロゲステロン製剤の方が、血栓症の遺伝素因を持つ人にはより危険な状態を引き起こしているという可能性もありうると思うのですね。

 

あくまでも私の推測であることをお断りしておきます。

 

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