月経過多 ピル 悪化

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過多月経が、低用量ピルを飲んだらよけいひどくなった。

 

以前にこういう感じの電話を患者さんからいただきました。

 

「先生、生理が軽くなるといって低用量ピルを飲むように言われたでしょう、あたしはピルなんか飲みたくなかったけど、先生の言うことを信じて飲んだのに、飲んだらものすごくきつい生理になったんよ、嘘つき、どうしてくれるの、誤診やないの先生の?ちょっと旦那と変わるわ。」

 

「おい、お前どういうことや、なめとったらあかんぞ、うちのは立つこともできんでふらふらになってねこんどるんやで!どう責任取るつもりや!」

 

実際はもっと激しい口調だったのですが・・・。

 

 

 

月経過多の治療方法の一つとして、低用量ピルを用いることがあります。

 

その目的は、ホルモン剤を飲んでもらうことで、ご自身の卵巣で産生したホルモンからの視床下部へのフィードバックを抑え込んでしまうことにあります。

 

これにより、下垂体からのホルモン分泌が抑えられて、患者さん本人の卵巣での卵胞発育と排卵が抑制されます。

 

結果的に、それに引き続く子宮内膜の増殖と分化も抑えることができます。

 

 

このピルに含まれているホルモンは女性の卵巣から出てくるホルモンと同じものです。

 

それをもう十分だよ、作らなくていいよ、という量をピルという形で投与することで、視床下部や下垂体をだまそうとするわけなのです。

 

 

ですが、卵巣ホルモンの産生量にはもともと個人差があります、ということは視床下部や下垂体の感受性にも差があるわけです。

 

十分な量の女性ホルモンが含まれていた中用量ピルであれば、ほとんどの人の視床下部がだまされていたのですが、低用量ピルになると騙されにくい人も出てくるわけです。

 

この場合、その人自身のホルモン産生が抑え込めずに、成熟した卵子の排卵まではいかないにしても卵胞発育が進み、子宮内膜の増殖も自分の卵胞からの女性ホルモンの刺激で進んでしまいます。

 

そこにピルに含まれる女性ホルモン効果が上乗せされる、それで出血量が逆に増えてしまうのです。

 

 

 

ですが、これ、長く見れば大丈夫なんです。

 

このような出血過多になる状態は生理2周期ほどで終わることが多いのです。

 

3周期目、あるいは4周期目からは生理の量は期待したとおりに少なくなる方がほとんどです。

 

 

 

なぜ、こういうことが起こるのでしょうか?

 

 

ここにも明確な理由があります。

 

 

排卵に至る卵子を育てるための卵胞発育が、一般に考えられているよりもずっと長いスパンで進行することがその理由です。

 

実は卵巣における卵胞発育は、休止期の原始卵胞が発育を開始してから排卵に至るまでに205日、およそ30週間かかるのです。

 

生理が終わりかけのころに発育を開始して、10日程度で排卵に至るように考えられている卵胞ですが、その時点ですでにもう28週間かけて発育してきているのです。

 

その最後の一押しの成長に下垂体から出る高濃度の卵胞刺激ホルモン(FSH)が重要なのですね。

 

 

ただし、そのFSHに反応するのは反応できる段階の卵胞だけで、それより前の段階の卵胞は反応しません。

 

この段階に入ることのできる卵胞は、生理が始まったころよりも10週間〜8週間前に発育を開始した卵胞です。

 

 

ということは、低用量ピルを飲み始めた最初の周期には、準備万端で28週間育ってきて、最後のステップ(下垂体ホルモンであるFSH刺激)にも反応できる卵胞が待ち構えています。

 

これらの卵胞が、ピルによるネガティブフィードバックで完全には抑えきれなかった下垂体ホルモンに反応して成長してしまうので、最初の周期には排卵近くまで卵胞発育進んでしまうのです。

 

これが、ピルの飲みはじめの周期中の排卵日の性行為では避妊がうまくいかないと考えておいた方が良い理由でもあります。

 

(もちろん、飲み始めからピルの中のホルモン剤の影響はある程度はありますから、卵子の成熟は最後までいかない可能性、子宮内膜も着床を受け入れるための分化には失敗する可能性、どちらもありです。つまり妊娠は防げる可能性がありますが、完ぺきではありません。

 

 

ピルを飲み始めての二回目の周期にも月経過多が治らないことがあります。

 

飲み始めた時に、すでにその次の周期の排卵のために24週間成長した卵胞も準備されているのですから、卵胞発育は、ピル内服の2回目も途中まで進んでしまうケースがしばしばあり、これが二回目にも出血過多を招くことになるのです。

 

(さすがにこの時点では避妊に関して言えば大丈夫だと考えられています。)

 

 

 

では、いつから卵胞発育が完全に抑えられるのか、いつから安全なのでしょうか?

 

次の次の周期の排卵のための卵胞が下垂体ホルモンに反応できるような段階にまで到達するのは、その周期の排卵の時です、その時点ですでに継続的にピルを飲んでいれば、それはおそらく大丈夫ということです。

 

次の次の周期の排卵のための卵胞発育が始めるのを抑えることが可能になる、つまりピルを飲み始めて三周期目でようやく完璧な効果が期待できるのです。

 

3回目ぐらいからは、卵胞発育も排卵も完全に抑えられて、子宮内膜の増殖も抑えられるので、経血量が減り始めるのです。

 

(ここも個人差はあり、3周期目でも満足な効果が得られない人はいますが、理論上は、4周期目からは必ず効果が出るはずです。)

 

 

 

このように、私たちの身体というのは、排卵一つにしてもものすごく時間をかけて精緻なリズムの中でそれをコントロールしているのです。

 

有効な薬を飲んだからと言って、それをゲームのスイッチのように簡単にコントロールしきれるものではありません。

 

そこのところをご理解ください。

 

 

 

冒頭の電話をくださった方にも、最初に2周期ほどは期待した通りの効果が出にくい可能性、出血が増える場合もあります。

 

ということを外来で説明したのですが、ここまで詳しい卵胞発育に関する説明はしなかったので、お話しした内容が正しく理解されていなかったのかもしれません。

 

(たぶん詳しく話しても耳を素通りしたでしょうし)

 

難しいです。

 

 

 

この記事は別の記事との連携記事です。

 

⇒ 月経過多とピル

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